技術資料 流量計精度に与える配管直管長さの影響

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流量計精度に与える配管直管長さの影響

差圧流量計、羽根車流量計、Turbine flowmeter 、渦流量計、 超音波流量計などの推測式流量計では上流側の非定常流(不均一流)による速度分布の影響で流量誤差を生じるために、とくに上流側には規定の直管長さが不可欠となります。

図1  差圧流量計の配管

図2-1 差圧流量計における乱流速度分布の発達

図2-1は差圧流量計(Orifice Flowmeter)型式:RDT STEAM用の配管設置であるがこの例ではSTEAMは右側より左方向へ流れる水平配管の例です。

右配管端部にValveもしくは曲り配管があると想定して端部付近の流れは「非定常流=不均一流」となっていて配管内のSTEAM速度分布は図のように乱れている。

ORIFICE PLATEに近づくにつれて、速度分布が乱流速度分布を形成して定常流=均一流に発達していくと考えます。

この乱流が形成されるのは一般に配管内のReynolds numbrer(レイノルズ数)が2320を超えた範囲であり、2320 以下では乱流に対して層流と呼び、流量計測が困難となる流量計が多い。

乱流という用語から連想する「乱れている流れ」と解釈するのでは無く、あくまでも均一に流れていると考えて、一般的な推測式流量計にとっては最も条件の良い流れであると云えます。

図2-2 乱流と層流における速度分布

この非定常流から定常流に乱流速度分布に発達するのに必要な上流側直管長さ L1 は長いほど発達度が高く、流量計の精度低下は小さくなります。。

図では差圧流量計を例として掲げたが、その他の 羽根車流量計、タービン流量計渦流量計、超音波流量計、熱式気体流量計 などの推測式流量計でも同じことが云えます。

しかし、実際の配管設計においては、この直管長さは極力短くしたいために、相反する要因となり、結果として流量計の精度を悪くしている工事が行われているのが実状です。

特に注意しなければならないのは旋回流が形成された場合には流量計の精度に与える影響が特に大きいことが判っていることです。

なお、差圧流量計(Orifice Flowmeter)では絞り直径比が大きい方が同じ直管長さの場合に流量誤差が大きくなります。しかし、絞り直径比が小さい差圧流量計は逆に圧力損失が大きくなり、選定するうえで Merit 、Demerit の相反する要因があるので注意が必要です。

下流側直管長さは上流側に比べて影響は少ないと云えるが、それでも配管内径Dの5倍の直管長さは最低限設置すべきです。

図3  差圧流量計における乱流速度分布の発達状況

オリフィス(差圧流量計)における必要最小直管長さについては JIS Z 8762-2:2007 の15ページから19ページに詳細に記載されていますので参照ください。

図4 は配管内径を D、上流直管長さを L1 としたときの流量誤差(%)を視覚的に示したものであり、差圧流量計で多く云われている「上流側に配管内径の10倍の直管」を設けて下さい。の根拠となるものであるが、10倍の直管長さを設けても、乱流速度分布の影響による流量誤差は0(%)とはならず、40~60倍の直管長さで初めて完全に発達した乱流速度分布が形成すると云われています。

流量誤差を流量係数の偏差と呼ぶ場合もあります。
(なお、図4の流量誤差数値は実際の流量計に適用するものではないのでご了承ください。)
(上流側直管長さが短いときに流量誤差がマイナスになるかプラスになるかは流量計機種と非定常流の形成状態により誤差発生状況が異なります。)

図4  上流直管長さの流量計誤差に与える影響

配管設計においては、可能な限り各種流量計で規定される直管長さを確保することが必要であり、流量計の精度を最大限に引き出す要因ともなることを考慮してください。

実際のPlantでは直管配管を短くして流量計精度を犠牲にするか、精度重視でSpace、Cost を犠牲にするかが行われているのが実状のようですが。

弊社にて扱っている直管長さが必要な 流量計型式は差圧流量計 RDT  ORF  RLW  RLG  RLT  羽根車流量計タービン流量計  FT   FTO   超音波流量計 などがあります。

面積流量計も推測式流量計ですが面積流量計の場合は流路の中心部にFloat部品が在るために、偏流などの影響を受けにくいことが検証されていますので、上で述べている配管直管は不要と云えます。

ただし、面積流量計入り口の直前に仕切り弁などがあり、弁開度によって極端な偏流が発生している場合はその偏流の影響で精度に悪影響を与えることがあります。

羽根車流量計(フロー・トランスミッタ 8550)の配管例

羽根車流量計ではロータの挿入位置が定常流(均一流)のときの平均流速である配管内径の10%に設定されているために、非定常流(不均一流)で流れると設計流量のロータ回転が検出されず、流量誤差が発生します。

特に上流側の配管の影響で旋回流が発生している場合などでは、極端な流量誤差が現れる場合が生じますので注意が必要になります。

ロータ部分の流れは定常流(均一流)である必要があります。

この乱流速度分布を短い配管長さで発達形成するための機器として、別途「整流装置」を掲げるが、流量計とは別途に設置する必要があり、Cost の面も考慮する必要があります。

整流装置については「製品案内」の項目でご紹介していますので、配管設計にて直管長さを短くしたい場合は参考にしてください。